それは三万六千年前に死んだ1頭のバイソン。
想像するに、そのバイソンは死んですぐに凍り付き、次の夏に溶けたバイソンは雨に運ばれた泥に少しづつ埋もれてゆきました。
何年かそれを繰り返し、体は地中に隠れ、永久凍土がまわりを囲んだのです。
そのバイソンを三万六千年後に掘りだしたのは考古学者ではありませんでした。
だいたい、考古学者によって掘りだされる発掘物は大変少なく、その多くは金目の物目当ての男達によって発見されるそうです。
そのバイソンも、金を求める金鉱師により20世紀になって見つけられたのです。それも、まだ赤身が残る完全な状態で。
研究が進むにつれ、どうしても解けないナゾがありました。
バイソンは、餓死や病死にしては十分に脂肪がつきすぎた、健康な状態だったのでした。明らかに殺されたのです。誰に?
それはやがて、後ろ足についていたひっかき傷により犯人?が特定されました。ライオンだったのです。
三万六千年前の洪積世の時代にはアラスカにライオンがいたのです。
そのもっともっと遙か昔にはシベリアと北アメリカは陸続きだったので、ユーラシア大陸の動物が北アメリカに広がっていたと考えられます。
後にそのバイソンを博物館に展示するために、一度毛皮を広げたところ、その中にライオンの歯のかけらが発見されました。
つまり、バイソンをしとめたライオンは、しばらくしてまた食べようとし、すでに石のように凍っていた肉で歯を折ってしまったということです。
アラスカ大学の研究者達は、この36000万年前のバイソンの肉をシチューにして「洪積世に乾杯する夕べ」を持ったらしいです。
気の遠くなるような昔の肉は、どんな味がしたのでしょう。
その肉を味わった時、ネアンデルタール人が生きていたある日の事を思ったでしょうか。
この記事を読んで、博物館にいってみたくなりました。
展示してあるものが生きていた、遠い昔の事を思ってみる。
耳をすませば、何万年も前のある日の風の音が聞こえてくるかもしれません。

